教員による図書紹介(清水ゼミ)

清水です。

かなり空いてしまいましたが、ゼミ毎の書籍紹介です。
今回は、清水ゼミで扱った書籍の中から一冊を紹介します。

ゼミの性格上、中国に関するものを時々読みます。

私から「これを読むぞ」というのではなく、学生の希望を聞いた上で、それに合ったものを私が選んでいます。今年は、こちらを選びました。


江戸後期の作家、上田秋成(1734-1809)による怪異小説集です。
江戸後期に流行した伝奇小説は、「読本(よみほん)」とも呼ばれます。

『雨月物語』が収録する小説の舞台はもちろん日本ですが、もともとは中国の小説から取材したものが多いのです。完全なオリジナルではないものの、その文章を読んでいくと、秋成の鋭く豊かな創意が感じられます。

『雨月物語』に限らず、日本人作家による物語の中には中国の小説を翻案したものが多くあります。日本人による翻案の面白さ、独創性によって、外国の作品が日本でも読まれていったのです。このように、地域や時代を超えた「読み手の継承」を念頭に置きながら作品を読むことは大切です。

ゼミでは、『雨月物語』の中から「吉備津の釜」を選んで読みました(ご当地もの?) 浮気性の夫に裏切られた妻の恨みが死霊となって夫や浮気相手に襲いかかります。映像もなにもないのですが、その結末にはぞっとします。

興味のある方は、本書を手に取って想像力をかき立てられるもよし、映像を楽しむもよし(『雨月物語』は映像化もされています。Youtubeで検索してみてください。色々と出てきます)。秋成の怪異ワールドを味わってみてください。