2015年10月31日 府中市立図書館 アルフチュールにて、青木教授と青木ゼミの学生たちによる講演会が行われました。題目は 「井伏鱒二の小説「海揚り」と終戦直後の府中の文化サロン」。
以下、青木教授による講演会の概要です。
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青木ゼミでは、3年次に共同研究で井伏鱒二の「在所もの」と言われる郷里福山市とその周辺を舞台とする小説を取り上げて、そこに描かれた地域文化についてフィールドワークを続けてきました。
本学の教育振興助成金の補助も得ながら成果を上げてきましたが、今回はその10年目にあたり、戦争直後の府中市を舞台の一つとする小説「海揚り(うみあがり)」を取り上げて、2014年・2015年と調査を続けてきました。その成果を、10月31日に府中市立図書館で発表しました。
青木ゼミの学生による発表 |
私たちの調査の目的は、「平田八春」という骨董屋が実在かどうかを知ることにありました。小説内では、主人公と中学時代の同級生ということになっており、芸術的センスにあふれた魅力的な人物です。今年の調査では、府中市在住の聴講生・小川マチ子さんと府中市立図書館副館長・田中いづみ様の協力で、府中市の郷土資料を収集・展示し、「西坊郷土資料館」の看板を掲げる金只彰浩氏を知ることができ、平田八春が実在の人物であることが判明したのです。また、終戦直後の府中市の活発な文化活動についても知ることができました。
会場には、今回の調査で発掘された平田八春氏制作の額絵「八幡神社境内図 皇紀二六〇〇年」及び、料亭の主人で、画家の北川実氏の油絵を拝借し、掲げました。今回の調査で、八春氏の息子さんにお会いしてお話を伺いましたが、この絵との再会に息子さんは涙されました。そして、この講演会を聞きに来られたギャラリーの経営者の方のところに八春氏の絵付けした菓子鉢があることがわかり、これは息子さんに寄贈されました。さらに、北川実氏の絵は、所蔵者・鍋島医院長から府中市立図書館に寄贈されました。
青木ゼミの調査が機縁となり、様々な出会いが生まれ、喜びの輪が拡がったことを嬉しく思います。