教員による図書紹介(脇ゼミ)


ブログ担当Sです。毎回教員が一つのテーマに沿って本を紹介するこのコーナーですが、今回からしばらくは趣向を変え、「ゼミ」単位での図書紹介をしていこうと思います。毎回一つの「ゼミ」が担当する予定なので、一年くらいはかかるかもしれません。「ゼミ」ですから、教員が書いても良し、学生が書いても良しなのです。

第一回目は、日本語学研究ゼミの回です。執筆者は脇先生です。では、どうぞ。
 ___________________________________ 

 脇ゼミでは「文化演習Ⅰ」(3年生前期)で、コミュニケーション研究の入門本を読書会形式で読むことにしています。読書会形式というのは、章ごとに担当者を決めて資料作成→報告→全員で議論というものです。
 で、今年度はこの本。
池田理知子.2015.『日常から考えるコミュニケーション学―メディアを通して学ぶ』ナカニシヤ出版
私のゼミは「日本語学研究ゼミ」となっていますが、実際はもう少し範囲が広く、日本語を中心としたコミュニケーション研究を軸としています。だから上記の本、というわけなのですが、そこにはもうひとつの理由があります。

 それは、ゼミ学生(特に3年生前期)の関心と可能性は多様なので、最初から“○○学”という狭い枠に囚われてほしくないと考えているからです。「コミュニケーション」を真ん中におけば、たいていの事柄は射程に収まります。「コミュニケーション」を切り口にして、まずは学術的な視点で〈日常〉〈社会〉〈人間〉を俯瞰する。個別の問題設定(卒論のテーマ)はその次です。

 そういう観点からするとこの本は実によく考えられていて、「コミュニケーション」は哲学的な問題(例:時間や権力)にも社会問題(公害や共生)にもつながる、ということが実感できます。しかも基本的な概念や人名が無理なく織り込まれていて、今後研究テーマを絞り込もうとする学生たちにはピッタリです。コミュニケーション研究の入門本はここ10年で続々と出版されましたが、その中でもかなり“使える”ものだと思います。

 ちなみに、過去の「文化演習Ⅰ」で読んだ本は以下の通り。どれもよい本ですよ。

井上俊・船津衛編.2005.『自己と他者の社会学』有斐閣アルマ
辻大介・是永論・関谷直也.2014.『コミュニケーション論をつかむ』有斐閣
板場良久・池田理知子編.2014.『よくわかるコミュニケーション学』ミネルヴァ書房